インサイダー ・・・ 96点。

 「この映画は事実だが一部には脚色もある」

そうです。私の嫌いな実話ものです。しかし今回最高得点をつけるに至りました。監督はマイケルマン。「ヒート」・・・。いいですね。好きです。さらに「L.A.コンフィデンシャル」のラッセルクロウ、「ゴットファーザー」アルパチーノ。・・・すまん。好きな人ばかりだ。ちょっとひいきめの評価かもしれません。
 アルが演ずるローウェルはCBSの人気報道番組「60ミニッツ」のプロデューサーです。彼のもとに匿名の資料が届くところから物語りは動き出します。タバコの燃焼性と失火について記してあるその資料に興味を持ったローウェルは、この件の専門家を探します。そして見つけ出したのがラッセル演ずるジェフリー。ジェフリーに取材を申し込みますがことごとく拒否されます。あの手この手を使って接触を果たしたローウェルの目には「ジェフリーは何かを知っていて、それを話たがっている」そう写ります。
 ジェフリーは資料とは別のタバコ業者に勤めていた科学者でした。しかしある日いきなりの解雇を告知されます。彼はその企業と「守秘契約」というものを結んでいます。企業秘密をばらして、もと勤めていた企業に損害を与えないという契約です。それを破れば退職金はおろか、健康保険をうしない、最悪は投獄されかねないものです。「アメリカ国民が知るべき重要な内部情報を守秘契約を破っても暴露したいと思っている。だが一方では守秘契約を尊守したい。」この葛藤を軸に物語りは展開します。
 そんなジェフリーとその家族の下には何処からか強迫行為が行われ始めます。彼の知る真実とは、そして彼は真実を話すのか。そしてローウェルはその真実を報道できるのか。

 私はローウェルとジェフリーの初対面のシーンで既にノックアウトされました。2人とも「激渋」といってよい演技で、その手のものが好きな方はぜひご覧になってください。この物語では、起こった出来事がすべて淡々と綴られます。派手な演出は極力避けられており、ある意味では地味でつまらない映画といえるかもしれません。それは題材の重要性と監督の方針によるものでしょう。物語は紆余曲折しますが、ただ見ているだけではそれはあっさりとしているようにも感じられることでしょう。ある意味、見る側を選んでいる作品といえるかもしれません。起伏に富まない物語をただ見るのではなく、その中の人物たちの気持ちの動きを見ることがこの映画の醍醐味だと思います。ということで、アルパチーノ特有の「演説」シーンもなく、その手のカタルシスを求める方にはやや肩透かしでしょう。もちろん派手なアクションシーンなどは皆無です。ラブストーリーや安易な友情物でもでもありませんな。2人の中心人物のやり取り。そして何よりジェフリーの葛藤。得体のしれない力が働く現代社会への不安。そんなところが見所だと私は思います。
 ローウェルを見ていて思うことは、人と人のつながりです。常に携帯で電話をしている彼。その相手はみな彼を尊敬しており、彼のために働きます。それは、彼が誠実で人徳あふれる人物だからでしょう。横のつながりは大切だ・・・。そう思える映画でした。みな彼を信頼しています。そんな信頼できる男とはどんな人物なのか。それだけでも見る価値アリでしょう。
 一方のジェフリーは、そんなに強くはありません。葛藤に苦しむだけでなく、酒や女で失敗したこともある普通の父親です。そんな彼にローウェルは親身に接しながらも、決断は自分でするべきだときつく言い聞かせます。この点が安易な友情物では見られない点ではないでしょうか。非常に骨太な作品に仕上がっていると思います。
 両俳優に文句のつけようもありません。回りの脇役も淡々とした中にキラリとひかるものがあります。音楽から映像からありとあらゆるものが抑えられた表現ですので、「これはアメリカ映画か?」と思えるのも確かです。ある意味ワビサビな日本人向けかもしれませんね。

 信頼と、男の決断。けして他人と自分に嘘をつかないことの大切さをこの映画は説いているように思います。

非常におすすめしにくい映画です。賛否両論となることでしょう。派手じゃないしね。子供には理解できませんので家族で見る映画でもありません。しかし、いいです。ここまで抑えた表現で感動をもたらすことができるというのは私には驚きでした。
 画面に出ている人物の表情、動作。そんな中からその中の心の動きを探ってみる。ある意味見ている側との心理戦ともいうべき異質の作品です。今までに出会ったことのない作品といえるでしょう。そんな未知との遭遇をしてみたいあなたに送ります。
 正直、自分の中でも賛否両論です。男性向けとも思いますので、女性に見てもらって感想を聞いてみたい作品であります。